PRODUCT

NAVAL GAZING - 2013 年王立オーストラリア海軍観艦式の壮麗なイベント

2014-08-01
(豪「AV Magazine」誌記事の翻訳転載)
文:Phil Meltzer
IFR1.png
写真:Cameron O’Neill

どんなイベントであれ,コミュニケーションは不可欠である。1913 年 10 月の麗らかな春の日,王立オーストラリア海軍の新設艦隊の 7 隻の艦船が排煙をたなびかせつつ縦列を作ってシドニー湾に初めて入港したときも調整と通信(コミュニケーション)は最大の要件だったろう。

当時,利用可能な方法は手旗信号と信号灯,そして火花送信機を介してのモールス信号を使った未発達な無線信号だった。海上無線は,船載無線局を毎日 24 時間有人状態にしておくことを義務づける国際条約がちょうどその年に批准されたばかりというまさに揺籃期にあった。

フィルム・アーカイブを見てみると手旗信号が用いられたことが分かり,新たに就役した巡洋戦艦 HMAS オーストラリアの信号灯および無線通信に関する上部構造には空中線が見える。

百年後──やはり申し分の無い春の日の 2013 年国際観艦式(International Fleet Review:IFR)というイベントでもコミュニケーションは到るところで行われていた。今回は 19 隻のオーストラリア海軍の艦船や 17 ヶ国[ブルネイ,中国,フランス,インド,インドネシア,日本,マレーシア,ミクロネシア,ニュージーランド,ナイジェリア,パプアニューギニア,シンガポール,スペイン,タイ,トンガ,英国,米国]からの海軍の艦艇,16 隻の大型帆船,そして地元の様々な船舶によって小艦隊が作られた。それだけでは不十分であるかのように,一大スペクタキュラーの夕べに,TV や FM ラジオやインターネットの放送で,港一帯の地元のライブ・サイトや照明と音声やプロジェクション・マッピングと同期した花火等を広く伝える試みも行われた。

手旗信号とモールス信号が 2013 年のこのイベントの実現に一役を買うことはもうないが,百年の時の隔たりにも係わらず,大規模なロジスティックと技術に関する専門知識と並んで,光学的通信と無線通信が極めて重要であることに変わりはない。

IFR6.png
国際艦隊が国際観艦式のためにシドニー湾に進入する際に,王立オーストラリア海軍の戦艦 HMAS ダーウィン,HMAS パース,HMAS パラマッタを率いる HMAS シドニー(写真提供:王立オーストラリア海軍)

IMAGINATION RUNS WILD
スペクタキュラーはスペクタクルを必要とし,まとめ上げるのに大きく発想できる人々も必要とする。王立オーストラリア海軍は「Imagination Australia」と契約して,このイベントの構想から実行までにわたってイベント・デザイナーおよびプロデューサーとしてのサービスを依頼した。

Imagination Australia の最初のチーム・ミーティングですぐに,シドニー・オペラハウスの帆のような外壁をビデオとイメージの巨大なプロジェクション・マッピングの「カンバス」として見做すようになったのは間違いないだろう。しかし彼らはもう一歩踏み出し,シドニー・ハーバーブリッジのパイロンを動員してさらなるビジュアルを収めるという挙に出たのだった。

湾岸地区でこのスペクタクルを楽しむ観衆数の見積は百万以上と予想されたが,出来る限りの多くの観客たちに当イベントのビデオおよび音声要素を届ける必要があった。これを実現すべく,マッピングと並んで,港の海岸線沿いにいくつかのライブ・サイトが設けられた。7 つのライブ会場以外にドーズ・ポイント[ハーバー・ブリッジの南詰]とミセス・マッコリーズ・チェア[ハーバーブリッジよりも外海側のガーデン・アイランド岬突端]にあるプロジェクション・サイトを利用して,Technical Direction Company と Norwest Productions はコンテンツを提供した。これらのプロジェクション・サイトはどれも HD ビデオと音声のメイン・トラック・フィードを RIEDEL の『MediorNet/RockNet』システムを用いた光ファイバー・ネットワークを介して Dataton Watchout と Avid ProTools から供給させた。約 120 万 ANSI ルーメンのプロジェクションと約 406 個のスピーカー・キャビネットが動員された。

BIGGER THAN NEW YEAR’S
しかし,このようなイベントのステージ全体のサイズでは,オペラハウスとハーバーブリッジのパイロンのような巨大なスクリーンでさえも全体の中の小さな一部分となってしまう。そのため,ボールズ・ヘッド[ハーバーブリッジよりも内側にある岬]からガーデン・アイランド[ハーバーブリッジよりも外側にある岬]までのオープン・スペースを埋めることが花火と照明の担当となった。Foti International が,有名なシドニーの大晦日イベントすらしのぐ花火をプロデュースした。通常の打ち上げ場所はハーバーブリッジと艀だったが,いくつかの市街ビルの屋上も補助的に使われた。

しかし無上の栄光を受けるべきは,普段はまったく違った種類の煙火に慣れ親しんでいる 7 つの巨大な灰色の打ち上げ場所,つまり王立オーストラリア海軍の戦艦だった。花火の制御は FireOne ソフトウェアを介して行われ,タイムコードは UHF ならびに TETRA(Terrestrial Trunked Radio)のメイン・リンクおよび RIEDEL が提供したバックアップ無線リンクを使って伝送された。

IFR5.pngIFR4.png
左:通常はヘリコプターや上陸用舟艇を扱う甲板から花火を打ち上げる重揚陸艦 HMAS トブルク(写真提供:王立オーストラリア海軍)
右:ミサイル護衛艦 HMAS シドニーの船首楼でオーストラリア国歌《Advance Australia Fair》を演奏する王立オーストラリア海軍軍楽隊(写真提供:王立オーストラリア海軍)

チーズとクラッカーのように花火と照明は天空で一体となる。花火の硝煙が最も有利に見えるように照明用の理想的な条件を作り出し,また照明は花火の適切な引き立て役にもなる──これは目で堪能する 3D カンバスである。Chameleon Touring Systems がこれらのスペースを埋めるハイライトと色彩を提供した。海岸線上の 8 個の照明塔と 7 隻のオーストラリア海軍の戦艦上で 500 台以上の照明機材が使われた。各ロケーションのコンソールは UHF 伝送されたメインの SMPTE タイムコードに同期した。しかしバックアップ・タイムコード・フィードはインターネットと iPad を用いた興味深いシステムによって供給された。これは Mac 由来の SMPTE コードをウェブストリームに乗せて ADSL 接続を介してウェブに送るものである。艦船と照明塔上では,各ロケーションにつき 1 台の iPad が Telstra SIM カードを介してウェブストリームをピックアップする。その後,このタイムコードは iPad のミニ・ジャック・ポートからの音声ケーブルを介して調光卓に供給された。

上記のような接続能力以外に,無線イーサネットを介して調光卓を遠隔的にプログラムする能力も追加された。岸辺のロケーションではビデオおよび音声フィードを供給するのと同じファイバー・リンクを用い,WI-FI と『MediorNet』の組み合わせを介してイーサネットに接続した。様々なリモート・サイトは RIEDEL の新たなメッシュ WI-FI システム──アウトドア用途に最適な復元力の強いマルチパス[multi-path]無線ネットワーク──を用い,MAnet(MA Lighting のイーサネット・プロトコル)を介して自らへのフィードを受け取った。

ライブ・サイトには近くないけれどもまだ港周辺にいてこのイベントを観ようとする人々のために,特別な低出力の FM ラジオ放送が準備され,FM レシーバーを 90.7 MHz に合わせれば花火とプロジェクション・マッピングがシンクロしている音声トラックを聞くことができた。

CASTING A WIDER NET
上記は地元の観客のためのものであるが,このスペクタキュラーをさらに広範囲の視聴者に届けるために,ABC と Chief Entertainment は放送パートナーの役割を果たした。ABC は自局の ABC1 チャンネルと News 24 チャンネルで全国放送を行い,Chief Entertainment はイベントのライブの映像パッケージを YouTube を介してインターネットに送ったのである。両社ともシドニー・オペラハウスに陣取り,ABC は自局 HD 放送車両の 1 台を使用し,Chief はオペラハウスのビデオおよびオーディオ・スタジオを利用した。シドニー・オペラハウスもこの目的に自らのファイバー網の一部と『MediorNet』システムを貸してくれて,それを RIEDEL が敷設したファイバー・ネットワークとリンクさせることで,放送局と接続しているイベント管制センター(AMP ビルディング[ハーバーブリッジ南側のサーキュラー・キー近くにある高層ビル]上層階)から花火の音声トラック・フィードやライブの音声とイーサネットへの信号経路を提供した。

IFR2.png
パノラマ的な展望の得られる非公開ロケーションにあった国際観艦式のスペクタキュラー用の管制室(写真:Danny Riess)

IFR3.png
RIEDEL のメインのコミュニケーションおよびデータ分配用コントロール・ステーション(写真:Danny Riess)

UNIFIED COMMS
このようなイベントはコミュニケーションの進化してきた最先端をまざまざと見せてくれる。手旗信号のことはさておき,コミュニケーションの定義は時とともに拡大して行き,今ではこの用語は単なる声のやり取りだけを指すものではなくなっている。現在の TCP/IP テクノロジーによって,かつては別の信号経路を使っていた諸フォーマットはひとつの伝送媒体に統合できるようになった。RIEDEL の『MediorNet』や『RockNet』や『Artist Matrix』のようなシステムは音声とビデオ,通話コミュニケーション,データ・ネットワーキングを同じ光ファイバーに相乗りさせる。光ファイバー・インフラが普及し始めているので,RIEDEL はこの国際観艦式のために自らが一時的に設置したまた別の 15 キロメートルのデュアルコアおよびクワドコアのファイバーの他に,市街に敷設済みのものとシドニー・オペラハウスのファイバーを,このイベントの『MediorNet』と一体化することができた。11 台の『MediorNet』フレームが用いられ,これと融合した『RockNet』が約 160 チャンネルの音声を異なるロケーションへと伝送した。音声によるコミュニケーションは RIEDELの『Artist Matrix』デジタル・インターカム・システムによって伝達された。イベント・パッケージ全体の一部として,アナログ UHF デュプレクス伝送システム,無線カメラ,FM 送信サービスも用いられた。

2 ウェイの無線トラフィックは 16 チャンネルの UHF TETRA 無線機材に割り当てられたが,これは比較的少数の周波数を大人数のユーザー間でトークグループという形でデジタル的に共有することが可能である。これらのトークグループは必要に応じて空きチャンネルに自動的に割り当てられ,従来の 2 ウェイ・システムの場合よりも帯域幅をより効率よく使うことができる。新しい技術ではないが,通常これは救急サービスや政府や大規模産業分野で用いられており,近年はエンターテインメントのアリーナに活路を見いだしている。

大規模イベントにおいて近年出現した技術には国際観艦式のために RIEDEL が購入した 5 GHz システムのもののようなメッシュ WI-FI ネットワークがある。屋外の広範なカバレッジ用に設計されたこのマルチパス[multi-path]無線ネットワークは,イベントに WI-FI サービスを供給する頑強なソリューションとなる。故障対応のためのリダンダント・システムがなくてはならないというイベントでの昔ながらの必要事項はメッシュ・システムによって本質的にカバーされる。というのもこれはセルフヒーリング[自己回復]だからだ。万一ひとつのリンクやノードが故障した場合,トラフィックは最も近く一番利用に適した経路を通るように自動的にルーティングされる。

SPECTACULAR
実際にこの夕べがどうだったかというと,「スペクタキュラー」の一語に尽きる。計画やプリプロダクション,システムや安全に関する資料の準備,徹夜のセットアップ,そしてリハーサル,と丹念に手順を踏んで来ての本番──結果はそれに十分に報いるものであり,世界規模のものだった。

そして,Imagination Australia の本プロジェクトの技術監督 Andrew Smith 氏の結論は次のようなものであった:「何ヶ月にもわたる極めて複雑かつ技術的な計画を要したこのプロジェクトは大成功でした。このプロジェクトを通じて得られたサプライヤーの方々からのサポートは最上のもので,それは素晴らしい結果をもたらした素晴らしいチームでした...」

Production credits
Imagination Australia
Trevor Smith: Production Director
Andrew Smith: Project Technical Director
Kym Chisholm: Project Producer
Mark Hammer: Lighting Director
Bill Ainley: Event Control Technical Director
Josh Moore: Event Technical Director
RIEDEL Communications Australia (Signal Management & Comms)
Jason Owen: Senior Project Engineer
Chameleon Touring Systems - Lighting
Pip Robinson and Luke Cuthbertson
TDC (Projection)
Kain Jones
Norwest Productions (Audio)
Project Manager - Michael Prescott
Foti (Fireworks)
Tim Gray
ABC (TV Broadcast)
Darryl Brook
Chief Entertainment (YouTube Webstream)
Michael Purcell

top_arrow.png
PAGE TOP