自分のモニターが部屋に適するように正しくキャリブレートされているかを確認するのに、どの測定方法を薦めますか?
今は様々な測定方法が利用できますが、レコーディング・スタジオ内の測定に適しているものもあれば、比較的小さい室内環境に適したものもあります。下記では、一般的に利用可能な方法の大半についてと、利用できるツールを使って信頼できる測定を確実に行うためのコツをまとめました:
- 1/3 オクターブ・リアルタイム・アナライザー(RTA):モニターを通してピンクノイズが再生され、普通は 1/3 オクターブ・バンドの LED 表示やグラフィカルな出力波形表示が行われます。測定から結論を引き出す前に、部屋の中の音場は安定した状態になっている必要があります。この方法で得られる結果は 1/3 オクターブ・スムージングならびに 300 ミリ秒を越える MLS 信号長を用いた MLS システムで得られる結果と同じになります。どちらの場合もこれはモーダルな励振が同じだからです。しかしこれは、測定では室内反射と残響は、直接音から反射音へのエネルギー感度がない実際の音楽信号での場合よりも際立つということを意味します。この方法は騒音の影響も受けやすいですが、良質な測定マイクを使えば、手早く比較的信頼性の高い測定技法であり、低域から中域のバランス取りには特に適しています。
- 正弦波と音圧計を用いたスポット周波数:単純な正弦波信号発振器を使って特定の周波数でモニターを鳴らし、音圧レベル・メーターを使ってそのレベルを測定します。この方法は騒音の影響を受けやすいだけではなく、不正確で時間がかかります。この方法も部屋の効果を強調してしまう部屋の定常状態の条件を計測していることになります。この方法は吸音処理が充分に施された部屋での低域のモーダル評価にのみ適しています。
- ワーブル・トーンのスポット周波数:この方法はテスト周波数をわずかに変調させることで部屋の影響を減らそうとしています。これは RTA や正弦波を使う方法よりも騒音の影響を受けにくいです。この方法も上記した効果から悪影響をある程度受けますが、一貫した結果が得られます。
- 掃引正弦波:この伝統的な方法は、低周波数から高周波数へ掃引される正弦波を使用し、周波数特性を示すグラフィカルな出力が得られます。正弦波の掃引速度によって周波数特性がスムージングされます。この方法は騒音に敏感で、部屋の影響を強調し過ぎますが、一貫した結果を出します。しかし、FFT 分析と組み合わせた掃引は極めて強力で、部屋の効果を排除でき、MLS で可能なのと同様にウィンドウイングによって潜在的なノイズも排除できます。さらに、MLS と対照的に、この方法は高調波歪を完璧に排除できます。
- Time Delay Spectrometry Analyzers(TDS):信号として速い正弦波掃引が使われます。騒音からの干渉が最小限に抑えられるように分析段階の前で掃引式トラッキング・フィルターが使われます。反射がマイクに到達する時間までに、トラッキング・フィルターは別のテスト周波数に移動しなければなりませんので、部屋の効果も大幅に低減されます。必要なだけの部屋の効果を含めたり排除するのにフィルターの幅と掃引の速度を使うことができます。これはインパルス応答を時間ウィンドウイングするのと類似しています。この方法には低域周波数での精度が失われる(タイトな「時間ウィンドウイング」による)という欠点がありますが、測定された応答は掃引速度とフィルター幅に応じて自動的にスムージングされます。これによって部屋の影響と周波数解像度との間のトレードオフはユーザーが選択できるようになります。パラメーターが適切に設定されているのであれば、この方法はスタジオ内のモニターを安定かつ一貫して計測するのに使えます。
- 2 チャンネル FFT(Fast Fourier Transform)アナライザー
- インパルスを使う(例えば銃声や風船の破裂音のような非常に短く大きい音):この方法はコンサート・ホールの室内音響を測定するのによく使われています。部屋の中のモニターの伝達関数(周波数及び位相レスポンス)はモニターのインパルス応答のフーリエ変換から計算されます。インパルス応答は反射の影響を排除するように時間ウィンドウイング可能ですが、短すぎるウィンドウが使われると低域周波数は不正確になります。コーンの移動量の限度とアンプのパワー・レールのためにモニターの最大音圧レベルが限られていますので、残念ながら完璧なインパルスを作るのは困難です。また、1 個のインパルスはごくわずかなエネルギーしか含まないために測定するのは簡単ではありません。
- ピンクノイズを使う(あるいは音楽を使う):全周波数にエネルギーのある信号(これが当てはまるかを確認しなくてはならないのですからすでに問題です)を入力信号として使用でき、伝達関数を入力と出力の相互相関から算出できます。入力信号は本来ランダムですので、この方法には精度誤差という欠点があります。これを克服するために、入力信号をある程度長い時間鳴らす必要があり、信号のノイズ成分を低減するために時間平均を行う必要があります。このことは新たな問題を生み出します。ボイス・コイルの発熱のためにドライブ・ユニットの長期的な出力は限られていますので、信号はある一定の音圧レベルである長さの時間だけしか鳴らすことができません(大音量、短時間 - この関係はほぼ指数関数的です)。この問題を克服するためにレベルは下げるべきですが、このことは部屋の中のモニターの S/N 比も減少させてしまいます。別の大きな問題は、この方法は定常状態の測定であり、それゆえあらゆる室内反射をそっくりそのまま含んでしまうことにあります。
- Maximum Length Sequence Analysers(MLS):この方法はモニターのインパルス応答、そして伝達関数を得るために、測定された信号と相互相関のある周期的な疑似ランダム・ノイズ信号を自ら生成して用います。この信号は「Maximum Length Sequence」と呼ばれており、ホワイトノイズと少し似た音がして、エネルギー成分の特性も似ています。この信号は 1 ビットのオン/オフという性質上、FFT アルゴリズム用に最適です。この信号は全周波数に等量のエネルギーを含みますので高域周波数ではモニターに問題を引き起こす可能性があります(高エネルギー成分かつ低クレスト・ファクター)。信号にプリエンファシス・フィルターを加え、その結果の測定にディエンファシス・フィルターを加えることでこの問題は克服可能で、室内で優れた S/N 比が得られます。この信号は疑似ランダム信号ですので、つまり完全にはランダムでなく、それゆえ未知の信号雑音の効果は大幅に低減されます。室内反射の効果を制限するのに時間ウィンドウイングを使用することができ、S/N 比をさらに高めるのに平均法も使えます。この測定方法は信頼性があり、再現性もあります。