低音が充分に出ていないかも知れないのですが?

モニター背後の壁

室内に置かれたモニターの低音レスポンスに関する重大な要因はモニターから近傍の壁面(境界)までの距離です。モニターを部屋の中でスタンドに載せて自立させて(「free-standing」)配置すると、通常はモニター後方の壁が低域周波数に対して極めて強い影響を持つことになります。この壁が放射された無指向性の低周波数エネルギーの一部を反射するからです。このエネルギーはリスニング・ポジションと一次音源点に向かって跳ね返されます。下図をご覧ください。

モニター後背壁

この反射した音が進むトータルな距離が元の音の半波長の場合、モニターの低域にノッチを生じさせて直接音に破壊的に干渉します。普通、この最初のノッチは約 2/3 オクターブ幅になり、室内での全体的低音エネルギーをかなり減少させます。モニターが再生できる周波数範囲内にこのキャンセレーションのノッチを発生させるような後背壁からの距離にモニターが置かれていないことを確認する必要があります。例えば、モニターの前面がその背後にある壁から 86 センチメートルになるように置かれると、キャンセレーション周波数は 約 100 Hz となります。このキャンセレーション周波数を計算する数式があります。下記は背後の壁から 86 センチメートル離すようにして配置した 1038A を測定した例です。

GENELEC 1038A - 反射の効果

モニターの前面は壁から 86 センチメートル離れた位置にあるので、モニター後背壁からの反射は 100 Hz のところにノッチを生じさせます。1 kHz 〜 2 kHz の間の櫛形フィルター・タイプのリップルはミキシング・コンソールからの反射によって生じたものです。パスバンドにおけるこのモニターの無響室周波数特性の誤差範囲は ±2.5 dB です。この誤差範囲の外にあるものはどれもモニターを部屋の中に置いたことによる効果です。

解決策

この問題を解消する方法はたくさんあります。どの方法が一番適しているかとどれを使うべきかは部屋によります:

「モニター後背壁」キャンセレーション・ディップに対する第 1 かつ最良の解決策は、モニターを堅い壁の中にフラッシュ・マウントすることです──フラッシュ・マウントは「無限バッフル[infinite baffle]」とも呼ばれ、このスピーカー後背壁反射及びキャンセレーションを完全に解消します。

第 2 の方法は、モニターを壁に極めて近づけて配置することで、これによってキャンセレーション周波数が高まります。この方法はモニターが小さすぎない場合に有効です。しかしリスクがあり、それはもともと中域の指向性が少ない小型モニターの場合で、ディップが中低域に移動し、さらに良くないカラーレーションが生じます。壁から 0 〜 20 センチメートルの距離にすればモニターのレスポンスは大抵の場合は変わりません(一次キャンセレーションのディップは 430 Hz までしか下がりません)。つまり、後方放射がきついキャンセレーションを起こすことができないように、モニターの指向性を充分に高くできます。また、モニターを壁に近づけて配置する場合は(最大 +6 dB)低域のブーストを補正する必要があります。

あるいはまた、第 3 の方法はモニターをかなり壁から離すように動かすことです:キャンセレーション周波数がモニターの低域カットオフよりも下に落ちるまで、です。ただし、「モニター後背壁」までの最小距離はモニターの低域性能に依存します。しかし、低域においては、そして大型モニターの場合は、最大距離が極めて大きくなってしまいますので実際的ではありません。

室内に自立式[free-standing]モニターを配置する

GENELEC のバイアンプ式システムは、アンプの冷却ならびに背面のレフレックス・ポート開口部からの音の放射のために、5 センチメートルの最小ギャップをモニター背後に残して配置してください。一般的にモニターの前面バッフルを壁から 30 センチメートルよりも離して配置すると、反射が低域レスポンスにキャンセレーションを発生させることがあり、そのために低音の音質が損なわれます。2 ウェイ・モニターの場合は、40 〜 80 Hz の範囲内の低域キャンセレーションは絶対に避けてください(下図参照)。80 〜 200 Hz の範囲内の低域キャンセレーションも可能であれば避けるべきです。これが不可能でも、音質はまだ良好であると受け取られるでしょう。これらの周波数範囲から推奨距離を導き出すと、許容できるレスポンスが得られるのは壁からの距離が 1 メートルまでのとき、ということになります。それ以上の 1 〜 2.2 メートルの範囲は絶対に避けてください。2.2 メートルよりも大きい距離に配置された大型スピーカーはその低域カットオフ周辺という極めて低い周波数帯域のキャンセレーションに悩まされることになり、そのためスピーカーの低域の伸びを妥協することになります。

後方壁からの距離

推奨距離:単一の壁から自立させたスピーカーのフロント・バッフルまで。適正()、許容()、避けてください()。

櫛形フィルター効果

周波数特性のノッチ及び自立させたスピーカーの背後にある単一の壁面とスピーカーのフロント・バッフルとの間の距離

2 つのことにすぐに気がつきます:

極めて低いカットオフ周波数(3 ウェイ・モニター及びメイン・モニター・システム)を持ち、壁から離して配置された大型モニターの場合、必要な距離は実際の部屋にとって大きすぎます。

同時に、室内の他の境界までの距離はモニター背後の壁への希望する距離に近づいてきて、これら他の表面からの反射がレスポンスを支配し始めます。

結論としては、最高の性能を引き出すには大型モニターは自立させないでフラッシュ・マウントするべきである、ということになります。

他の境界からの反射音

低域のキャンセレーションのその他の原因は床や天井や側壁やスタジオ後方壁からの反射です。キャンセレーションはなおも音の到達距離の差による半波長キャンセレーションに基づきますが、音は同じ経路で戻りませんので少し異なる数式が必要です。事実、これはキャンセレーション周波数を求める一般的な等式であり、それは中域で生じる卓の反射にも使用できます。

解決策

これらのような反射問題を解決するのにはいくつか異なる方法があります。

  • 反射音がリスニング・ポジションに向かわないように部屋の形を変える:これは物理的及び金銭的な理由から、必ず実現可能ということはないでしょう。
  • 低域キャンセレーション問題を避けるために、リスニング・ポジションの後ろにある壁(後方壁)がリスニング・ポジションから 3 メートル以上離れるようにする:長さが 5 メートルに満たない部屋の中では、これはしばしば問題となります。
  • 反射音のレベルを下げるために吸音材を追加する:一般的に、これは費用のかからない解決策ではありますが、残響時間(T60)が悪影響を与える可能性があるという不利な点があります。

キャンセレーション周波数を計算する数式

四分の一波長キャンセレーション周波数
fc = c / 4dx
ただし:
fc はキャンセレーションのノッチのセンター周波数
c は高度 0 m、20°C の大気中の音速 = 344 m/s
dx はモニター前面からその背後にある壁までの距離


モニターから壁までの最小距離
dmin =1.4 c / 4 f-3 dB
ただし:
dmin はモニター前面からその背後にある壁までの最小距離
c は高度 0 m、20°C の大気中の音速 = 344 m/s
f-3dB はモニターの -3 dB ローカット周波数


半波長キャンセレーション周波数
fc = c / 2(dreflect-ddirect)
ただし:
fc はキャンセレーションのノッチのセンター周波数
c は高度 0 m、20°C の大気中の音速 = 344 m/s
dreflect はモニターから反射性の表面を経たリスニング・ポジションまでの距離
ddirect はモニターからリスニング・ポジションまで直接音が進む距離