トップへ戻るhome
JUNGER_LOGO

Jünger Top | 日本語取扱説明書&技術解説 | 企業情報

日本語取扱説明書&技術解説:ジェットコースターのようなラウドネス変化

一覧に戻る

ジェットコースターのようなラウドネス変化、それをどう乗り越えるか

番組の配給会社と放送局はどちらもソースを切り替えたときのビックリするようなレベル変化に長年苦しんできました。音量すなわちラウドネスはソースごとに大きく変わる可能性があり、無人運用を台無しにしてしまいます。

ラウドネスの顕著な差はテレビ番組と CM との間にしばしば存在します。視聴者にとってこれは非常にいらつかせることです。なぜならそのためにいつでもリモコンに手を伸ばして音量を調整しなくてはならないからです。この問題は CM に限定されてはいません —— 明らかなラウドネス差は 1 つの番組内、例えばスポーツの生中継や映画やトーク番組、にもあり得ます。

ビックリするようなレベル変化は、中継局が、特に放送されたコンテンツの平均動作レベルを制御する手立てをまったく持たない衛星中継局や IPTV プロバイダーが、対処しなくてはならない問題でもあります。

このようなことから色々な疑問が浮かんできます:最も音量の高い番組が最良なのでしょうか? ラウドネスは品質の保証となるのでしょうか? そして、これが放送局と視聴者が何年も対処してきたことならば、どうして気に病む必要があるのでしょうか?

問題は、広範なコンテンツが提供され、多種多様な視聴ツール(テレビ、インターネット、モバイル機材、DVD)が利用できる今日、鬱陶しい副作用程度に見られていたものが大きな懸念になったことです。視聴者はリモコンを手に握りしめながら TV を観ることに嫌気がさしており、番組制作者も提供側も等しく不満です。苦情は至る所で雨あられのように降り注ぎ、行政側までを巻き込んでこの問題に対処する規制法を検討させるほどです。土壇場に追い詰められたのは、唯一この問題について咎められるべきであるだけではなく収拾されることも求められている放送局とネットワーク・オペレーターたちです。

実際に何が起きているのか?

放送局の送出センターは供給側からラジオ及びテレビ番組を受け、それを視聴者に分配します。時にはアナログ伝送の前にソースは別のチャンネルへと変調されたり周波数変換されます。デジタル環境ではソースは受け取られるとデコードされてから、さらなる分配の前に新たなエンコーディングとマルチプレクシングが行われます。

HDTV サービスへの移行に伴って、ラウドネス問題は関連性を増してきました。というのも大抵のデジタル HD サービスの音声はマルチチャンネルの符号化フォーマットで伝送されるからです。使用されている最も一般的な規格は Dolby Digital としても知られる AC-3 マルチチャンネル・デジタル・オーディオ・コーディング・フォーマットです。今日、PCM のステレオ・トラックと同じものを 5.1 コーディングされた AC-3 とでは、かなりのラウドネス差を感じることが頻繁にあります。

音声信号に何が生じているかを測定するのに、放送局は普通は PPM 及び QPPM メーター表示に頼ってきました。しかしラウドネスを扱うようになると別の測定を導入する必要があります —— ラウドネス・ユニット(LU)です。下図はなぜこれが重要かを示すものです。


上側のグラフは音声入力を示し、下側のグラフはラウドネス処理後のレベルを示します。


様々な番組からの音声信号がラウドネス機材による制御を受けていない上側の図では、ラウドネス・レベルが番組間でかなり急変しています(水色の線で示す)。下側の図は、その放送局がラウドネス制御機材 —— この場合はラウドネスを制御するために ITU-1770 準拠のアルゴリズムを組み込んだ Jünger Audio の Level Magic システム —— を導入すると、同じ音声信号がどのようになるかを示しています。水色の線はずっと平坦になって様々な番組間のラウドネス・レベルがさらに安定するようになったことを示しています。ITU BS1770 の勧告に従うと同時にピークもさばいており、要するに視聴者の耳にはずっとやさしくなりました。

ラウドネスを制御するには様々な音声ソース間の音量を均すために何らかのゲイン制御を行う必要があります。そして視聴者がこれを受け容れられるようにするには、このゲイン制御が聴いて分からないことが重要です。このことを理解するために、音響心理学的な効果について見てみる必要があります。

遷移時間が長いと人間の耳は音響的な事象の強度の変化を認識しません。1 dB のゲイン変化が 3〜4 秒かけて行われると、人間の耳は肉体的にその変化を検出できません。これは 3 秒につき 1 dB 以下の速度のゲイン変化を行えば、その操作は視聴者には分からないということを意味します。この回路が速すぎるゲイン制御を行おうとしない限り耳に付かない自動ゲイン制御を実現できます。

突然の音声レベル変化に関連する別の音響心理学的な効果があります。基本的にはダイナミックな音を聴くのは不愉快なものではありません。実際、番組のドラマチックな内容を享受するには色々な音声レベルを知覚する必要があります —— 例えば高い音声レベルは興奮や不安を高めますが、低いレベルは喜怒哀楽を伝えたり、台詞の背景となるのに使われます。頻繁に音声レベルが突然 12 〜 14 dB 以上落ちたり跳ね上がるとしたら、人間の感覚では把握するのが極めて難しくなり、そして視聴者にとってはこのような予期せざる突然のラウドネス変化は当然のことながら非常に不快になりかねません。

解決策は何か?

自分たちが問題を抱えていることを大抵の放送局が認識しだすのよりも遙か前に、Jünger Audio ではラウドネス問題に気が付いていました。ラウドネスは違ったふうに扱う必要があり、「ピーク」を使って測定することすらできないことが最初から分かっていましたので、Level Magic™ という形でソリューションを開発したのです、ステレオと 5.1 を備え、様々なソースからの音声にも対応し、放送局が現在直面している諸問題にうまく対応するレベル制御機材の充実したシリーズ。

これらのような効果に対する私たちの研究はアダプティブなラウドネス制御アルゴリズムの創造へとつながり、それは同時に Level Magic™ の卓越したレベル制御性能を可能にした 3 つの基本的な回路設計も含んでいました。それらは、アダプティブな AGC、トランジェント・プロセッサー、そして歪のないブリックウォール・リミッターです。レベラー(AGC 及びトランジェント・プロセッサー)に対しては入力される音声信号を即座に分析するために Jünger Audio はレベル検出器のユニークな組み合わせを用いています。その分析に基づいてゲイン変更が適用されます。高速ゲイン変更要素としてのトランジェント・プロセッサーと低速ゲイン変更要素としての AGC という 2 つのゲイン変更要素は信号経路内で共に動作します。上述のように、ゲイン変更がつねに耳に付かないようにするためには AGC をゆっくり行うことが重要です。しかし、このように AGC を設定するとトランジェントを扱うのが、そして入力レベルの速い変化を扱うのが非常に難しくなります。この問題を解決するためにトランジェント・プロセッサーを信号経路に組み込みましたので、Level Magic™ は音声信号のトランジェントな要素を制御することができます。

Jünger Audio 社のシステムの特許アルゴリズムは入力信号の時間に伴う変化によるアタック及びリリース・タイムの自動調整も可能にします。これを「適応的処理制御(Adaptive Processing Control)」と言います。入力されてくる音声の波形を観察することで、このシステムは定性的な状態のときは比較的長いアタック・タイムを、そしてインパルス性のトランジェントがあるときには極めて短いアタック・タイムを設定できます。

マルチループ・デザインをデジタル的に組み込むことによって音声信号経路に短い遅延時間を持たせることができます。これによってゲイン変更要素に「先読み」させて、最も速いトランジェントであっても制御に間に合うように、遅延済み信号に適用する前に、必要な補正を決定することが可能になります。絶対にオーバーシュート(クリッピング)のない、正確に均された出力信号を提供するリミッターにとってこれは特に重要です。

適応的制御のマルチループ・アルゴリズム・デザインのユニークな組み合わせによってエンド・ユーザーの操作をほとんど必要としない洗練された音声レベル制御ソリューションを生み出すことが可能になりました。Level Magic™ アルゴリズムは「一度設定したら忘れてしまう」ような使い方ができます。要するに、以前はこのようなシステムに付きものだった副作用なしに、信号のラウドネスは制御下に置かれます。そしてこのプロセッサーはマルチバンドではありませんので、スペクトラル・バランスには手を触れることがありません。

今年、Jünger Audio 社は ITU 1770 に基づいたレベル検出アルゴリズムを Level Magic™ ハードウェア・プロセッサーの全放送局バージョンに導入しました。結果として、Level Magic™ は一貫性のあるラウドネスを生み出すだけではなく、レベル検出を簡単に ITU モードへ切り替えできますので ITU のラウドネス制御仕様にも準拠したことになります。

Jünger Audio 社では Level Magic™ はラウドネス問題への十全なソリューションをお届けできるものと信じております。当社の C8000 モジュラー・ハードウェア・システムは放送局が必要とするあらゆるモジュールを網羅しています。それには ITU 1770 に準拠する 5.1 とステレオの音声レベル制御、AES/EBU インターフェイス、HD/SD-SDI エンベディング、一連の Dolby ハードウェア・モジュール、そして関連する Dolby メタデータを検証・設定し、コーディング済みのストリーム内で使うためにエンコーダー回路に内的に転送することを可能にするオプションのメタデータ・ジェネレーターが含まれます。当社のカードはすべてウェブ・インターフェイスを介して設定でき、LAN コントローラー・カードの SNMP オプションを使って管理システムから監視できます。

今日まで 6,500 台を超える On Air Level Magic プロセッサーが世界中に設置されており、送出及び衛星向けの伝送センターやケーブル及び IPTV 分配、音声レベル変更付きの番組伝送、サーバーへの取り込み、そして音声レベルとラウドネスの連続制御が重要な様々な場面などの用途をカバーしています。このシステムがモジュラー形式であることはそれをステレオ専用にも構成できるし、5.1 の音声信号とも組み合わせることができことを意味しており、その場合は、ラウドネス問題や信号フロー間のラウドネス差なしにユーザーは自身のメタデータを挿入、デコード、エンコード、フェイルオーバー、読み取り(既存の場合)、そして生成できます。

ラウドネスの基準値を -31 dBFS に設ける Dolby の旗に我々は皆ついて行けば良いのか、それとも EBU の P-LOUD 分科会によって現在議論されている数値である -20 dBFS 周辺に合意点を見いだすべきかの業界の「グルーたち」の間での激しい論戦に言及するまでもなく、ラウドネス基準の欠如は確かに問題を起こしています。

確かに Jünger Audio 社はラウドネスに関する最終的な規格が何になるかをまだ知りません(誰も知ってはいません)。しかし、私たちが行っているのはあらゆる選択肢に対する回答を用意することです —— そしてラウドネス問題は何らかのかたちで対処されなくてはならないことを再認識しています。これは始まりに過ぎません。

Peter Pörs、2008 年 12 月