2015-10-07

5都市8教会のオルガンで同時演奏する作品にLAWO社の音声/映像機材を使用

8台のオルガンで1つの作品,8人のオルガン奏者で1つの演奏会,8つの教会で1つの聴衆──ドイツのカールスルーエ市の誕生 300 年を記念する特別なイベントでは,姉妹都市のハレ(ドイツ),ナンシー(フランス),ノッティンガム(英国),ティミショアラ(ルーマニア)にいるオルガン奏者たちが,カールスルーエにいる4人のオルガン奏者たちと同時ライブ演奏を行いました。

Wolfgang Mitterer 氏に委嘱された現代オルガン作品《Organum》を演奏するこのイベントは,カールスルーエ州立デザイン・アカデミー(HfG:Hochschule für Gestaltung)に衛星生中継され,演奏するオルガニストたちからのライブ・ビデオ・フィードと音楽自体はアカデミーで2台の LAWO『V__pro8』ビデオ・プロセッサーと1台の LAWO『mc²36』オーディオ・ミキシング・コンソールを使って,技術的かつアーティスティックな難題の伴う音響/映像インスタレーションに供給されました。

LAWO 社の音声機材と映像機材
このイベントにはラシュタットを本拠とする Audio Broadcast Services 社(ABS)が LAWO 社の映像および音声機材を提供し,LAWO 社のサービス部門と共同して技術的な諸問題の解決に取り組み,8つの教会から受ける衛星ストリームのデエンベディングならびに個別の音声信号と映像信号を提供するのに,また映像の処理にも,IP ベースのコンパクトなフルデジタル8チャンネル・ビデオ・プロセッサー『V__pro8』が使われました。
LAWO『mc²36』と共に『V__pro8』はライブ PA システムとレコーディングの両方のためにコンサートのサラウンド・ミックスも供給し,これらの個別要素が組み合わされて,音楽家の熟達の技だけではなく技術オペレーターたちのものも必要とする複雑な作品が創り出されました。

アーティスティック・コンセプト
この作品のコンセプトが固まると,その実現はカールスルーエ大学の教育・メディア・経済学部門の Achim Heidenreich 博士に委ねられ,同博士が《Organum》と呼ばれるこのプロジェクトの総監督となりました。
現代オルガン音楽の著名な作曲家の一人 Wolfgang Mitterer 氏に委嘱された音楽作品に基づいて,Heidenreich 博士はオルガン奏者たちと共同してまったく新しいアートワークを計画し,HfG に作った《Carée》という名前そのものの正方形のインスタレーション内で音声と映像を一体化するコンサート用作品を創作しました──ここを訪れる人々は8台のラウドスピーカーとプロジェクション・ユニット内を歩き回って,音楽とビジュアルの一人ひとり異なった体験をすることができます。これは「デモクラティックな作品」としてデザインしたと Heidenreich 博士は説明します:「コンサート・ホール内の特定の1箇所だけで完璧に聞こえるような音楽は時代遅れの封建時代の遺物です。往時,すべては王様のためのボックス席だけで一番良い音がするように整えられていましたが,私たちのインスタレーションでは訪れた人々は自分が聴く場所を見つけ出すように促され,意のままに移動することができます」。

計画とコーディネーション
このプロジェクトの技術設計とコーディネーションはカールスルーエ芸術メディア・センター(Zentrum für Kunst und Medientechnologie)やその他の機関の現代音楽部門で活躍しているトーンマイスター Sebastian Schottke 氏によって監督されました。
サイマルキャスティングに必要なことを考察すると,音声信号と映像信号を8つのロケーションで捉えて衛星リンクを介して HfG に中継する必要があることは明らかでした。これは安定した遅延を持つ同期伝送を保証できる唯一の手段です。Schottke 氏がオルガン用のマイクの選択と配置についての指針を作りました。これにはカメラやオルガニストの位置も指定されています。
音声信号と映像信号は,ケルンを本拠とする放送メディア・サービス・プロバイダー Media Broadcast 社が派遣した SNG バンならびに各教会に配置されたパートナーの SNG バンへと供給され,衛星リンクを介してカールスルーエに伝送されます。この信号は Media Broadcast 社のもう一台の SNG バンで受信され,音声映像インスタレーション用の LAWO セットアップに供給されます──全部で9台の SNG 車両これに関わったことになります。
様々なメーカー製のオーディオ・ミキシング・コンソールを使った経験から,Schottke 氏はコンサートのミックスに LAWO『mc²36』を選びました。「私がミックスで重要視しているのはフィデリティであり,『mc²36』は編集を一切必要としない特に高音質なサウンドを提供してくれます。DSP パワーに加えて,このコンソールにはコンパクトなサーフェスがあり,素早い操作ができます」と同氏。
『V__pro8』からのライブ・ストリームと平行して,DAW がバックアップ(演奏会の際には使われない)としてサンプル録音を供給し,事前に制作されたサウンドが MADI を介して『mc²36』に伝送されました。Schottke 氏曰く「2台の『V__pro8』ユニット──1台はリダンダンシー用ですが──とデジタル・ミキシング・コンソールを使うことで,信号を SNG から取った後では信号経路全体をデジタルに保つことができましたから,変換を繰り返しても信号の質は劣化しませんでした」。

技術的処理と作品の演奏
構想,作曲,技術的準備作業,そしてリハーサルと進んで,衛星リンクが予約され,初演の日,本当の興奮が始まります──オルガニストたちは 2015 年 9 月 19 日午後 4 時と再度午後 9 時に演奏を開始。演奏は電波時計の示す秒単位で同期していました──楽曲が定める適切なタイミングに正確に従う必要があったからです。オルガニストたちはこの曲を即興的なパッセージで発展・拡張することができましたが,音響的制御のためのリターン回線はなく,決められたタイムスロット内で行う必要がありました。「ワールドカップの決勝戦が学校の構内で8つ同時に行われたようなものだと想像してください」と Heidenreich 博士は説きます。「このイベントはまさにそのときに生じたのです。このようなことはこのような形態では以前には存在しませんでした。カールスルーエの聴衆の皆さんは8台の別々のオルガン間の交互作用を1つの同期した音響体として体験したのです」。